雨宮処凛「バカだけど社会のことを考えてみた」/バカでもわかる社会問題

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これまで自らの足を使って若者の「生きづらさ」そして「プレカリアート」問題など格差と貧困に対する取材・執筆・活動を精力的に展開してきた筆者だからこそ、可能な現場の視点で、いまや誰もが直面しうる生きづらさへの無策を問いなおす。

p17
現在、この国で生活保護を受けているのは216万人。
そのうちの四割以上が「高齢者世帯」、次いで多いのが「障害・傷病者世帯」で三割以上、実に八割近くをお年寄りや障害、病気や怪我で働けない人が占めているのだ。
また、一八~六四歳の「稼働年齢層」と呼ばれる「その他世帯」の割合は一六パーセント程度。確かにその割合はこの十年で倍増しているが、失業者やワーキングプア状態の人が増えたことを思えば、もっと増えていてもおかしくないというのが私の感想だ。
また、「その他世帯」の半分以上が50代以上。「若いやつが働けるのに受けている」などというイメージが一人歩きしている感があるが、生活保護を受けている「その他の世帯」の中で20代は5パーセントである。このような数字からは、中高年で仕事を失うとなかなか次の仕事が見つからないという状況が浮かび上がってくる。

生活保護というと不正受給が多く、外国人が多く受給していて、昼間からお酒やギャンブルをして暮らしているというイメージがある人も多いのではないでしょうか。イメージで物事を語らず、きちんとしたデータを見ることは大事だと思います。

p81
1995年に日経連が提言した「新時代の日本的経営」についての話も聞いて大きな衝撃を受けた。
1995年の段階で、経済界は「これからは働く人を3つに分けましょう」という提言をしていたのだ。
一つ目は「長期蓄積能力活用型」、二つ目は「高度専門能力活用型」、三つめは「雇用柔軟型」。幹部候補生のエリート正社員と高度なスキルを持つ派遣社員。そして激安の使い捨て労働力の三つに働く人を分類しようという提言だ。

格差社会が問題になっていながらも、いつまで経っても解決の糸口すら見えないと感じている人は多いのではないでしょうか。解決できないのはなく、解決しないのが正しいようです。今の世の中は狙い通りになっているから変える必要がないというわけです。

p89
「怒れ」と言われたって、怒ることなどできない。
なぜなら、「怒る」ためには自己肯定感が不可欠だからだ。自分はこんなひどい扱いを受けていい人間ではない、という最低限の自己肯定感。
私自身、労働や貧困の問題をもう七年以上取材しているが、現場ではほとんど「怒りの声」など聞いたことがない。
どんなに厳しいノルマを押し付けられても、上司に暴力を振るわれるような職場でも、多くの人が「こんなダメな自分を雇ってくれるのはこの会社だけ」という形で「感謝」しているのだ。
そんな彼らの自己肯定感が「過酷な労働環境」で奪われたのかというと、実はそうでもない。話を聞いていると、既に子どもの頃から奪われているのだ。教育課程で「足りない部分」ばかり指摘され、周りと競わされ、勝ち続けられなければだめ出しされ続けてきたというのは、この国のほとんどの人が経験していることではないだろうか。
しかも、学校でも家庭でも、「とにかくどんなに辛くても歯を食いしばって耐えろ」というようなメッセージが吹き込まれる。また、社会に出れば出たで、就職が厳しければ厳しいほど、「せっかく就職できたのに辞めるなんて甘えている」という価値観が幅をきかせる。

私も足りない部分を色々と指摘されて育って、「怒り」を感じることのない生活をしているので耳が痛いですね。

p101
彼女以外にも、私の周りで精神的な病を抱え、風俗で働く人は多い。
どうして風俗を選んだのか。
そう聞くと、決まって同じ答えが返ってくる。
病状によって調子のいい時と悪い時があり、毎日同じ時間に出社するような普通の仕事はできないけれど、風俗であれば調子の悪い時には休むこともできるから。
今の企業社会は働く人に常に「100パーセント」を求める。「調子が悪いんで今日は休ませてください」なんて言葉は当然、通用しない。では非正規雇用はどうかというと、こちらも「正社員ばりの働き」を求められるケースが増えている。

働ける時に働き、休みたい時は休むという働き方は今の世の中ではほとんど許されていません。また、バイトであっても、バイト一人が休んだら回らなくなるケースもあると作者さんは書いています。

p135
日本の原発に使うウランの多くは、アメリカで濃縮しているのだという。その固法かすはそのままアメリカに置いてくるので、それが劣化ウラン弾に転用されている可能性がある。

原発と戦争。何の関係もない二つが実は深い関係があるようです。原発が稼働すればするほどアメリカは兵器を作っているかもしれない。原発は単純に電力の問題ではないようです。

p158
(デモについて)当時、野田首相はこの動きをまったく無視していた。官邸前に20万人が集まっても、その日のコメントは「大きな音だね」。
が、毎週末に集まる人はまったく減らない。「(原発)再稼働反対」の声は大きくなるばかり。そんな状況を受け、野田首相は首都圏反原発連合メンバー9人との「会談」に出席せざるを得なくなったのだ。

デモなんてやってもなんの意味もないと考えている人は多いでしょう。しかし実際に首相を動かしたケースもあるとのこと。数を集めれば首相と面会できると前例を作ったことは歴史的に大きな意味があると作者さんは書いています。


貧困、生活保護、ワーキングプアなど雨宮処凛さんの得意とする分野について知ることができます。入門書といった位置づけでしょうか。あまり詳しくない読者にもわかりやすく説明されています。より深く知りたいのであれば他の本を読むと良さそうです。

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