雨宮処凛「全身当事者主義」/ニュースが報じない日本の負の部分

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いじめ、リストカット、自殺未遂、プレカリアート、イラク戦争、死刑制度、「空気を読め」の大合唱…。どっちを向いても生きづらい今、希望はどこにあるのだろう?「傍観者なんかでいられない!」と立ち上がった7人が声嗄れるまで語り合った、明日へのヒント。

p22~23
実は今、フリーターやニートの期間、あるいは入院期間があったという理由で就職できない事態になっているんですよ。企業によるメンヘル系排除です。大きな企業だと入社の時に性格試験があって、300問くらい質問が並んでいて、そのうちの何割かが明らかにうつ病チェックなんです。メンヘル系を排除しても仕事がほしい健康な人が応募するから人材に困らないんですね。
ハローワークでも、「うつ病の経験のある人には仕事を紹介できない」と言われることがある。フリーターがバイトに応募しても、フリーターだったからダメだと言われる。そういうことを何度も経験すると、確実に歪みますよ。症状だって悪化させてしまう。

うつ病になる理由の多くは仕事がらみでしょうが、会社はうつ病を嫌います。うまく嘘をつく人のほうがが好かれるのはよくないね、ともこの本には書かれています。

p27~28
メンヘル系の人って親を憎んでいる人が多いですよね。ある部分、「親が悪いんだ」と精神科医が言って後押ししてきたところもある。でも私は今まで親のせいにされすぎてきたように思うんですよ。自殺した人の親を見ているとそちらも本当にかわいそうです。明らかに虐待などがあった場合は別ですが、一人の人間が親のせいだけで死ぬことって、そうそうないと思いませんか? 学校や社会全体の問題だったりもするのに、親が背負えないものまで背負わされているような。

甘やかすと自分で何を決められない子に育ったり、厳しくしすぎると今度は人に頼めない・助けを求められない子に育ったりするようです。親の育て方が悪かったということもあるかもしれませんが親は親なりに頑張ったようにも思えます。

p33
もう一つ、自分にとって大きかったのは、トンデモない人との出会いです。私を右翼活動に誘ってくれた見沢知廉さんはゲリラ事件や殺人で、刑務所に12年間入っていた。そんな見沢さんは、ご飯を食べながら、人を殺した時のことなんかを淡々と喋るんですよ、こうやって顔を焼いたとか、指紋を焼いたとかしゃべるんで、もうびっくりして、善悪はともかく、突き抜けた人であることは間違いないです。そういう人たちといっぱい会うと、これまで持っていた自分の常識を疑うようになる。鮮やかにそれまでの価値観とかが破壊される。

信じられないことをするような人は時々いますが、そういう人でも社会生活を成り立たせています。そういう人と会うと、人間はもっと弾けても大丈夫なんだといったセーフラインみたいなものが広がるように感じます。

p60~61
「クラスメイトの報告があったんで一応確認しました、はい終わり」じゃ、いじめが防げないですよね。いじめを受けている中高生に話をきくことも多いんですが、先生は面倒くさがってる。関わりたくないっていう気持ちがありありとわかります。いじめがあると認めると、その子が卒業するまでの数年間かなり突っ込んで関わり続けないといけない。いじめが広まるとすごく面倒になるし、先生も今忙しいから、ひとつのいじめを見過ごすことが仕事をひとつ減らすことになるんですね。私はいじめられていた当時、はっきり「面倒だ」って先生が言うのを聞きました。

教師もサラリーマンである以上は仕事を増やしたくないと考えるのも仕方ないと思うか、それとも子供の人生に影響するようないじめ問題を放置するなんて信じられないと思うか。どちらも一理あると思いますが、いじめは許されることではありません。それにしてもいつまで経ってもいじめ自殺が問題になり続けていますね。

P88
私は過労死した人の遺族に会ってますが、過労死も組織的な巨大ないじめだっていうことを痛感します。遺族は憎しみが絶対に捨てられないし、「憎しみを忘れろ」なんて言えない。そんなことを強要されるなら、まだ殴られた方がましでしょう。子どもを殺された親に「憎しみを捨てろ」なんて絶対に誰も言う権利はない。

過労死する前にやめればいいと言う人はいますが、生活を人質に取られている状況では転職は難しいです。特に養うべき家族がいる場合はなおさらです。過労死は社会的弱者を取り扱っているこの本のテーマとは違うのでは?と思われるかもしれませんが、私は一方的に搾取され続けて命まで奪われる立場の弱い人というニュアンスで受け取りました。

p166~167
「愛」って言いましたけど、その対極が「自己責任」っていう言葉だったなって思います。あの事件(活動家の人がイラクで人質になった事件)以降、「自己責任」という言葉が明らかに悪用されるようになりました。この言葉ほど人を突き放している言葉はない。
私はフリーターや不安定な非正規雇用問題について関わっています。「働かない若者はだらしない」って言う人がいるんですけど、働けない理由のかなりの部分は社会の責任なんですよ。雇用政策が変わったり、バブル崩壊以降の不況が非正規雇用を生んだこととか、日経連などの財界の要請だとか、派遣法を改正したことで、雇用が不安定になったりとか。自分の責任だけじゃないのに「自己責任」って言われてしまう。

70人しか入れない部屋に100人押しかけて、あぶれた30人を自己責任とするかどうか。簡単に使ってしまいがちな自己責任という言葉には、簡単ではない問題がたくさん含まれています。

p189
『ビッグイシュー』っていう、ホームレスの人たちが売っている雑誌がありますよね。その販売員に去年くらいから若い人が急増しています。販売員の募集をすると、やってくる半分くらいが20~30代だそうです。『ビッグイシュー』の販売員に限らず、ホームレス化する若者の経歴として典型的なのは、学校卒業後、不況で正社員になれなくて派遣で働きだしたパターンですね。

業務縮小などがあると真っ先に首を切られるのは非正規雇用です。その後、別の職に就けたり親に頼ったりできればいいのですが、そうでない場合は生活保護やホームレスとなるケースが多いそうです。会社はすぐに首を切れる非正規雇用を好んで採用しています。

p205
いずれにせよ、若い世代が向こうで仕事と生きがいを見つける発想でこの国を出て行くのはありだと思うよ。希望が見いだせないこの国に対して、中指を立てる。そういうことが、ひょっとしたら日本を変えるかもしれない。石原慎太郎だって、製造業だって、経団連だって、20代が半分以上いなくなったらさすがに慌てるでしょう。デモもいいけれど、みんないなくなっちゃう方が効果が大きい。

一般市民が国を変える方法は選挙だけと思われがちですが、そんなことはありません。抱えている不安を何らかのかたちで行動に替えることが大事なのではないでしょうか。

p225
勘違いされるんだよね。「オウム、右翼、解放同盟を撮った森はどんなスキルを使ったんだ?」って、特に業界の人によく聞かれるけど、答えは全部一緒。「撮っていい?」って聞いたら「撮っていいよ」って言われたから撮っただけ。スキルなんていうレベルじゃないです。みんな「オウムは危険だ」、「右翼は撮れない」、「解放同盟は取材を断る」って思いこんでいるから。

ニュースで報じられている部分だけで判断すると勘違いしてしまいがちです。近づいたらまずいと思われる人でも、誰に対してもかみつくわけではありません。人間として生きていますから普通に人付き合いはできます。
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ニート、非正規雇用、自殺、いじめ、戦争といった社会的に負の部分とされる箇所にスポットを当てた対談集です。雨宮さんの本はどれもそうですが、ご本人が当事者であっただけに迫力のある本に仕上がっています。
ただ、フリーターなどの問題を扱っているのに「フリーターは能力が低い、ダメな奴」といった論調の人は人選ミスではないでしょうか。その人の部分はあえて引用しませんでした。

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