池谷裕二「単純な脳、複雑な「私」または、自分を使い回しながら進化した脳をめぐる4つの講義/新発見だらけの脳科学

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最先端の脳科学を読み解くスリリングな講義。ベストセラー『進化しすぎた脳』の著者が、母校で行った連続講義。私たちがふだん抱く「心」のイメージが最新の研究によって次々と覆されていく―。「一番思い入れがあって、一番好きな本」と著者自らが語る知的興奮に満ちた一冊。

p34
外界にピンク色が存在しているかどうか、あるいは、ピンク色が光波としてもうまくに届いているかどうかは、あまり重要なことではなくて、脳の中のピンク色担当のニューロンが活動するかどうかが、「存在」のあり方、存在するかどうかを決めているということになります。
哲学では「存在とは何ぞや」と、大まじめに考えていますが、大脳生理学的に答えるのであれば、存在とは「存在を感知する脳回路が活動すること」と手短に落とし込んでしまってよいと思います。つまり私は「事実(fact)」と「真実(truth)」は違うんだということが言いたいのです。

人間は目や耳や鼻、触覚で外界を感知します。逆にいうと、五感でしか世界に触れることができません。植物は本当はピンク色だったとしても、目が緑色として受け取ったならば緑色となります。

p54
「単純接触現象」といって、長時間接しているけど好きになるという脳の性質を示しています。これは実感できますね。だって、クラスメイトや部活メンバーの仲間内で付き合う人って多いでしょう。社会人でも同じ。なんだかんだ言って社内結婚が圧倒的に多いんですね。
結局、近くにいる人はよく接しているから好きになりやすい。これはかなり根強い現象だと思ってもらっていいです。

好きな人に振り向いてもらいたいといった定番の恋の悩み。脳科学的にその答えを言うならば単純に接している時間を増やしましょうとなるようです。

p75
つまり、睡眠は脳や体をクールダウンするための休息時間では決してなくて、もっと積極的に情報の整理や保管を行うための活動的な「行為」である、ということです。というわけで、「ひらめきは寝て待て」が本当だと理解していただけたでしょうか。

難しい問題を解くという実験で、問題を見てから8時間頑張って回答する、問題を見てから8時間睡眠して起きた直後に答えるというグループに分けて実験したところ、睡眠グループが圧倒的な高得点を出したとのことです。

p110
みんな目の構造は知ってるよね。図鑑とかで見たことあるでしょ? 目にはレンズがある。レンズで屈折した光が眼底の網膜で像を結ぶ。
目のレンズは片目1枚ずつしかないよね。ということは、虫メガネと似ているね。虫メガネを目の前に置いて、遠くの風景を見たことはある? どういうふうに見えた?
──上下がひっくり返って見える。
(略)
つまりね、僕らはそもそも常にひっくり返った世界を見ているってことなんだ。

日本人はシマウマを白地に黒のシマが混じっている生き物として認識しています。しかしアフリカでは黒地に白だと思われています。アフリカでは肌の色が黒だから当然そうなります。何が正しいか、何が間違っているかなんて脳には関係ないとこの本では述べています。

p124
中性的な音をネズミに聞かせながら、同時にテグメンタ(注:快楽を感じる脳部位)を刺激してみる。
ネズミの大脳皮質には、聞こえた音を処理する場所があるけど、その中には9000ヘルツに対応する領域もある。おもしろいことに、テグメンタを同時に刺激すると、9000ヘルツの領域が拡大するんだよ。面積が広がって反応性が上がる。
(略)
好きなものに触れたり、嫌いなものにさらされると、脳の物理的構造そのものが組み換わっていく。後天的な「好き嫌い」という嗜好性は、ネズミでも人間でも、きっと、そうやって形成されていくものなんだろうね。

ラの音を聞かせると同時に脳の快楽中枢を刺激するとラの音を好きになる。ロックが好きとかカレーが好きとかの好みはそうして形成されていただけで、どうして〇〇を好きなのかと聞かれれば「同時に快楽中枢が刺激されたから」と答えるのが正解のようです。

p140
「がんばれ!」とか「いいね!」「ナイス!」などというポジティブな単語を見せる。そういう、ちょっとジョークっぽい雰囲気さえ漂う実験。
(略)
実際に実験してみたら握力がほぼ2倍に増加することがわかったんだよね。

サブリミナル効果の実験です。サブリミナル効果というのは一瞬だけ何かの映像を見せることで、あまりにも一瞬すぎで何かが見えたという気がしないけれど脳は認識しているというものです。サブリミナル効果でポジティブな単語を見せたら成績が上がったという実験だそうです。

p167
ほかの二人同士でゲームを楽しんでいて、本人だけが「のけ者」になったという状況になる。その時の気持ちは想像できるよね。仲間はずれにされると、誰だって淋しくて胸が締めつけられるような、とってもイヤな心境になるでしょ。
実は、この実験は「のけ者にされたときの脳の反応を調べる」という研究。そんな状況に置かれたときの脳の反応をMRIで測定したみたわけ。そしたら、驚くことに、<痛み>に反応する脳部位と同じ領域が活動したんだ。

心が痛むというのは物質的な痛みと同じことだそうです。会社などでストレスを感じるような状況が継続的に続く場合、殴られ続けているのと同じような状況だということです。

p314
ひねくれアリがルートを外れて、たまたま近道を発見する。短いルートの方が高濃度のフェロモンが残るので、古いルートは効率の良い新ルートにとって代われれる。

真面目で100点満点なアリばかりを集めて集団を作れば完璧に物事を進められると思いがちです。しかし、不真面目なアリがまれにより良い方法を見つけ出すことがあります。人間社会でも新しい発見をするのは奇人変人と言われるタイプの人が多いですね。

p317(時間経過が確率が変わるスロットマシーンについて)
最初にもっとも当たる台を選んで、それをずっとやり続けているだけだと、知らず知らずのうちに損している可能性もあるので、ときどきはほかの台もチェックしなきゃいけない。そんなとき、ふと「台を変えてみようかな」と思い至るのって、きっとノイズなんだよね。

脳にはゆらぎ(ノイズ)が存在していて常に同じ状態ではありません。条件が同じのゴルフのパットを外すのは脳のゆらぎが原因であると説明しています。このゆらぎは不利益なことばかりに思われがちですが、上の引用のように「気まぐれ」を生むことによって自分をよりよい状態に持っていくこともあります。
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脳科学についての本を何冊も出している池谷裕二先生が、高校で講義した時の講演をまとめたものです。最初と後半で口調が違っているのは講義する相手が変わっているからです。
高校生相手に説明しているだけあって、わかりやすく説明されています。
脳についてだけではなく、哲学や生物学的なことにも少し触れています。

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