岡田斗司夫「世界征服は可能か?」/子どもの頃に抱いた夢は実現できるのか

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アニメや漫画にひんぱんに登場する「世界征服」。だが、いったい「世界征服」とは何か。あなたが支配者になったらどのタイプになる?このさい徹底的に考えてみよう。

はじめに なんで「世界征服」なのか
第1章 世界征服の目的(『仮面ライダー』と『北斗の拳』の場合
「世界征服」の四つの目的)
第2章 あなたはどんな支配者か?(人類はカタツムリを支配している?
支配者の四つのタイプ)
第3章 世界征服の手順(第一段階 目的設定
第二段階 人材確保
第三段階 資金の調達と設備投資
第四段階 作戦と武装
第五段階 部下の管理と粛清
最終段階 世界征服・その後)
第4章 世界征服は可能か?(「自分だけ豊か」はありうるか
「支配」とは何か?
「世界征服」にはうまみがない?
結論:これが「世界征服」だ)

p21~p22
格差社会といわれる現代、希望すら持ちにくくなってしまっている現代社会。いっそのこと、一度全部破壊してやりなおせたらいいのに、と思ってしまったこと、ないですか?
そこで、この本は「現代に世界を征服してみたらどうなるか?」を具体的にシミュレーションしてみた本です。いったい「世界征服」って何なのか。本当に「世界征服」って可能なのか。

アニメなどによく出てくる世界征服。大抵の場合は正義の立場が勝利するので実際に世界征服が行われることはまずありません。「実際にやってみた」に似たタイプの本です。

p28~p40
「世界征服」の四つの目的

悪の首領に必要なのは、まずなにより「ビジョン」です。
というわけで、私なりに「世界征服の目的」というのを分類してみました。
アニメや漫画、特撮の中で語られる悪の帝国の目的は、だいたい次の四種類に分かれます。

その1「人類の絶滅」
その2「お金が欲しい」
その3「支配されそうだから逆に支配する」
その4「悪を広める」
その他:目的が意味不明

わかりにくいその3とその4について説明しますと、その3は「機動戦士ガンダム」におけるジオン公国と地球連邦です。もっともジオンは敗北したせいで悪とされてしまいましたが。
その4はドラゴンボールに出てくるピッコロ大魔王です。なんのために悪を広めるのかはわかりませんが、そういう混沌とした世の中が好きなのかもしれません。

p45
「おまえのところで飼っている何十羽ものニワトリは、すべておまえの支配下だ。つまりお前はニワトリを支配してる!」
そんなこと言われても全然うれしくないですよね。
ニワトリを支配していると言われても、現実には「ニワトリの世話をしている」だけなんですから、ハムスターを飼っている人は「ハムスターを支配している」のではなくて「ハムスターの世話をしている」だけです。

人類は人間以外の世の中を支配していて征服しているとも言えますが、世界征服という気はしません。同格の相手を支配してこそはじめて世界征服といえます。つまり、人間の相手は人間や人間に似た存在でなくてはなりません。

p50
A 「正しい」価値観ですべてを支配したいタイプ。
B 責任感が強く、働き者・仕切り屋タイプ。
C 自分大好きで、贅沢が大好きなタイプ。
D 人目に触れず、悪の魅力に溺れたいタイプ
(略)
だいたい支配者というのはこの四つのどれかです。

Aタイプが魔王。「自分勝手な人間どもを絶滅させてやる」というタイプ。
Bタイプは独裁者。アドルフ・ヒトラータイプです。
Cタイプは王様。自分が世界で一番偉くなって贅沢三昧をしたい。北朝鮮の金正日タイプ。
Dタイプは黒幕。デスノートの八神月やルパン三世 カリオストロの城のカリオストロ伯爵タイプ。

p147
国が富み栄えるということは、実は国民一人ひとりの教育程度が高くて、国民一人ひとりの収入が多いということなのです。そうすれば、たとえその国が独裁国家であっても、結果として独裁者も豊かになり、その国も豊かになって、ドルとの交換比率も上がって、よその国のものが買えるようになる。そうしてはじめて、独裁者は好きなものを好きなだけ買えて豊かな暮らしができるわけです。

自分以外の人間を奴隷にして、自分だけが豊かという世界は残念ながら実現不可能です。奴隷ばかりというのは生産者ばかりのこと。消費者が世界征服をした自分だけだと世界が成り立ちません。

p151
ローマ帝国は独裁者によって運営されています。というより、独裁者というのは言葉自体、ローマ帝国の政治システムから生まれた用語です。
もともと共和国家であったローマは、度重なる戦役や国内の混乱に対処するため、迅速かつ公平な判断を下す統治者制度をつくりました。それが「独裁者」です。

日本の政治のように協議してから物事を決めるスタイルではフットワークが鈍いです。一人がすべてを行う独裁者は何事もスピーディーですが、アドルフ・ヒトラーのように暴走することもあります。

p176~177
時代は流れ、「世界を制する」の意味は移り変わりました。
「富」を自国や自分たちに集中させること。(スペイン大英帝国)
軍事で優位に立ち、世界中のどの国からも攻撃されないこと。(旧ソ連や冷戦時代のアメリカ)
多元化する価値観社会で、自分たちの文化こそがスタンダードだとすること。(ローマ帝国や現在のアメリカ)
今もなお、世界を支配しようとする個人はいるのかもしれません。
しかし、もし存在したとしても、彼に待ち受けているのは「人類の世話人」だったり「私たちをより豊かにしてくれる人」という役割しかないのです。大企業の社長業が、苦労や義務ばかり多い、なかば名誉職でしかないのと、驚くほど似ています。

世界征服にうまみはないとこの本では述べています。なにを征服と呼ぶかにもよりますが、世の中を支配するよりも遊んで暮らす方がよっぽど楽しいです。

p179
今の世界はもう既に、自由経済とネット社会、情報社会によって、革命が終了してしまった世界です。
ここでもう一回世界を支配するのはすごく難しい。どういうことかというと、自由経済とネット社会というシステムによって、私たちの「気分」がブームを作り、それが私たち自身を支配しているからです。

マスコミに作られた流行ではなく、本当の意味での流行。私たちはその流行に行動を支配されます。流行語を言ったり、流行っているアイテムを買ってみたり。流行が世界を征服してるとも言えます。

p182
「悪」というのは時代によって変わります。
というより、「その時代に信じられている価値観に反対すること」が悪の定義なのです。
そして、その流れで考えるならば、現代の「悪」とは「大衆社会」「情報社会」に反対するものになるのです。

昔は同性愛が悪とされていましたが、今では同性愛を差別することを悪としています。正義も悪も時代によってまったく違います。

p184~185
「今の時代に、世界征服は可能か?」
おそらく、それは可能です。
そして現代の「悪の組織」とはボランティア形式で、エコロジー団体みたいなもので、案外ハートウォーミングな合言葉で集まっているような団体ではないでしょうか?
すなわち「地域通貨の見直し」だったり「経済優先ではなく、フェアネス・トレード」であったり、「ボランティアによる非営利団体活動」「ネットではなく、人と人との直接の交流」を広めようとしている団体です。
これらの価値観が広まると、現在の社会を安定させている「自由経済原理」と「階級の無意味化」という要素にヒビが入るでしょう。

アニメや漫画などによる世界征服のイメージとはかけ離れていますが、実際はそんなものです。ネットの世界に限定すると、googleはネットの世界を征服しつつあるように感じます。
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かつて流行った「空想科学読本」のような本だというとわかるでしょうか。空想の中にしかないものを現実世界に持ち込んでみたらどうなるの?というもしもの世界を思考実験したものです。決して役に立つものではありませんが、読み物としては良著です。

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