池谷裕二「脳はなにげに不公平」/実生活でも使える脳科学コラム

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目の前の人のマネをすると好感度が上がる、
上流階級の人のほうがモラルが低い、
手を握るだけで記憶力がアップする──
そんな脳の不思議と科学の最新知見を、
人気の脳研究者が軽妙かつやさしくつづった
「週刊朝日」の連載が待望の書籍化。
明日、誰かに話したくなる!!

【目次】
I 好運は伝染する
●不平等な世界のほうが安定する
●顔は性格を反映する
●マネをすると高感度があがる
●性の快楽はアルコールで埋め合わせ可能
●自分の話をすることは快感
●上流階級ほどモラルが低い
●好調な人の運は伝染する
●女性の勝負色は「赤」
●嘘は目でバレる
●自分が下す「判断」はとても曖昧
ほか

II 人類2.0
●ゲームががもたらす良い効能
●見ている夢を当てられる日も近い
●外国がペラペラになるかは遺伝子次第
●脳の電気刺激で方向音痴は改善するか
●人口増加の原因は「悪しき遺伝子」の温存! ?
●DNA変異は父親の年齢が鍵に
●増強薬、あなたなら使いますか?
●ついにハゲ治療に朗報か
●言語マヒが生む天才! ?
●IQと遺伝子の複雑な関係
ほか

III 脳の不思議な仕様
●「嘘をつく能力」は脳の標準仕様
●睡眠とは何なのか
●男女で違う脳の使い方
●寝不足になると脳がサボる
●寝不足は太る
●「見分け」の回路FFAのすごさ
●「脳の活性化」は本当にいいの?
●脳のデフォルトモード
●「若者」でいることがうつ病に?
●「我慢する姿」が相手を幸福に
ほか

IV 「心」を考える
●死んだら心はどうなるか
●他人は痛みを感じているか
●「無」の存在は脳は感じる
●サルの恩返し
●ヒトの善悪を科学で分析すると。。。
●生命はどうやって誕生したか
●白い音、白い匂いとは?
●超能力は存在するか?
●「自由」は行動してみてわかる
●他人の感覚は共有できるか?
ほか

p25~26
一般的にいえば、ある個人が自分の経験を他人に話すことは、知識や知恵の伝授につながります。これは社会的な利益となります。脳は、これを目的として「自己暴露を促進する神経回路」を進化の過程で発達させてきたのかもしれません。
ミッチェル博士らは、脳活動の記録だけでなく、人が自分のことを話すためにとる行動選択についても、心理学的な試験を行っています。
(略)
多くの方は、自分について答える質問を選ぶ傾向があることがわかりました。

自分のことを話すのが好きな人は多いですが、それは人間の脳がそういう風にできているからだそうです、また、SNSでプライベートを暴露することについてもこの実験結果で説明できると池谷先生は書いています。

p28~29
定価よりも安いとなにか得した気がするものです。
しかし、この心理、そんなに単純ではないことがわかってきました。たとえばレディオヘッドというイギリスの音楽バンドの例を挙げましょう。
彼らはホームページで、ファンが自分自身で自由に決めた金額を払って曲をダウンロードできるよう、新アルバムの音楽ファイルを公開しました。もちろん払いたくなければ一切払わなくてもよいのです。
ところが多くのファンはきちんと代金を支払いました。
(略)
似たようなビジネスモデルは、芸能界やゲーム産業でも試みられていて、一定の成果をあげています。

お金を払わないのが一番得する行動なのに、あえてその行動をしないという人間心理があるようです。池谷さんが書かれているゲーム産業とはソシャゲなどのことだと思いますが、あれらはギャンブルと同じようなものなので少し違うのかもしれません。

p34~35
ピフ博士らは、確かに「上級階級はモラルが低い」と主張しています。
(略)
社会的ステータスの高い人は事実を隠したがることがわかりました。「あとから状況が変わったことにすればよい」という作戦なのでしょう。ともかくだましてでもいいから、自分に有利に交渉を進めるのがステータスの高い人の特徴です。

お金を持っているから性格が悪くなったのか、それとも性格が悪いから成功することができたのかはわかりません。清貧という言葉は案外事実を突いているのかもしれません。

p42
面白いことに個人の「流れ」は当人だけでなくチームメイトにも感染するようです。カリフォルニア大学のボック博士は昨年、30試合以上連続安打を記録中の「ノった」選手がいるチームは、仲間の平均安打率も上昇することを統計的に示しました。ボック博士らはこのように運の伝染する理由を、「ヒトには自然と他人の動きを真似るクセがあるからだろう」と説明しています。

これは日常生活でも応用が利きそうな実験結果です。仕事でもなんでも流れがいい人の近くにいれば自分もいい流れに乗ることができます。

p83
2009年に報告されたアムステルダム自由大学のヴィンカウゼン博士らの調査によれば、第二言語の習得は、環境よりも遺伝的要因が強く、後者の寄与が71%とのことです。
(略)
ここまで赤裸々になると、英語の授業で「成績」をつけることの難しさが浮上します。努力では変更できない「遺伝子の優劣」を数値がしているだけだという側面が拭えないわけです。

母国語以外の言語を習得しやすいか否かは遺伝によるものが大きいとのことです。私みたいに英語が苦手な人はそういう遺伝子だから仕方ないと自分を弁護したくなります。

p86
参加者が空間内を探索しているときに、嗅内皮質を電気刺激すると、その後、目的地に早くたどり着けるようになることがわかりました。通常ならば、うろうろと迷って無駄なルートを通ってしまったりするものですが、街の地図を覚えるときに脳を刺激された者は、迂回が減り、効率よく近道を見つけ出すことができたのです。

SFのように脳を刺激して頭をよくするという未来は実現可能なようです。脳のドーピングができるようになれば様々なことで役立ちます。人道的にどうなのという意見もあるでしょうけど。

p102~103
視覚研究者シュナイダー博士は、前部側頭葉が言語を司る脳領域であることに着目し、「言語が超人的な能力を発揮することを抑制しているのではないか」と述べています。確かにナディア(注:サヴァン症候群の天才画家)は、成長後に特殊な教育を受け、多少の言語を話すようになりました。すると、絵画の才能は消えてしまったのです。

物を考える時、普通は言語を使います。では言語を習得できてない人は思考することができないのかというとそうでもないようです。むしろ、言語があるからこそ脳の活動を制限してしまっている可能性すらあるようです。

p139
博士らは、健康な男女各10名を集め、「冗談」を聴いたときの脳の反応を記録しました。脳活動の大半は言語や知識に関与する部位で見られ、その点については男女差がありませんでした。
しかし、女性でより強く活動する脳部位がいくつか見つかりました。その一つは側坐核です、側坐核は快楽に関与する脳部位です。つまり、女性のほうがユーモアを楽しんでいるようなのです。
(略)
「男はオチの前からその結果にこだわっているのに対し、女は素直に提示されたオチを楽しむ」ということのようです。これに加えて、男は妙な闘争心から「うまいこと言う奴だな」という嫉妬もあり、素直に側坐核が活動できない可能性も考えられます。

話の面白い人が好きという女性は割と多いです。それは脳科学的に説明できることのようです。また、この結果は男性が女性を口説く時にも使えそうな実験結果ですね。

p142
博士らはネズミの睡眠時間を一晩(といっても実験室のネズミは日中に眠ることが多いので、厳密にいえば「一昼」)剥奪してみました。強制的に徹夜させたわけです。そして徹夜明けの脳の活動を測ると、驚いたことにネズミはかろうじて起きてはいるのですが、脳は部分的に睡眠をしていることがわかりました。
(略)
こうした脳の部分的な眠りを「局所睡眠」と呼んでいます。
おもしろいことに局所睡眠が生じていると、学習成績が低下します。これは寝不足の状態では仕事の効率が下がることに対応しています。この理由が
脳のパーツが交互に作業をサボっているからだ」という点が、この発見のポイントです。

睡眠不足の時仕事の能力が落ちるとは昔から言われていました。それは実験結果から裏付けされました。部分的に眠るという脳のメカニズムによるものなので、根性が足りないとか気合が入っていないといった類ではないようです。

p145
寝ている最中は体が休んでいます。ですから体全体のエネルギー消費は低下します。つまり、重量の出力が落ちますから、寝れば寝るほど太りそうです。ところが実際に測定すると逆の関係になることがわかります。肥満な人ほど睡眠時間が短い傾向があるのです。
(略)
睡眠不足は活動によるエネルギー消費が増加する分以上に食べ過ぎてしまい、肥満を引き起こすというわけです。
「では食べなければいいのでは」と思われるかもしれませんが、睡眠不足になると「食事を節制しよう」という自制心そのものが減ってしまうようなのです。

寝ると太るというイメージがあります。しかし実際はその逆で、睡眠不足な方が太ってしまいかちなようです。睡眠ダイエットというのは聞いたことがありませんが、よく眠ることが肥満を抑制できるようです。

p155
ただぼんやりしていることは、脳のアイドリング、つまり脳がなまけている状態ですから、活動は低下しているだろうと想像する人が多いでしょう。
実際はそんなことはありません。脳部位によっては、何か作業しているときよりも、むしろ活発に活動しているのです。しかも、でたらめな活動ではなく、脳全体が協調して、高度に調和の取れた状態で活動しています。
つまり、脳は休んでいるわけではなくエネルギーを積極的に消費して「ぼうっとしているという状態」をわざわざ作り上げているのです。

なんのためにぼーっとしている状態を作り出しているのかは不明とのことです。睡眠などは脳を休めるために眠っているイメージですが、脳はバリバリ活動しているようです。睡眠と似たようなメカニズムなのかもしれません。
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週刊朝日で連載しているコラムをまとめた本です。池谷裕二先生といえば脳科学に関する本をいくつも出版されてますので知っている方も多いかもしれません。ラスト四分の一ほどは脳科学に関する内容というよりも、池谷先生が普段思っていることをまとめたコラムのようになっていました。

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