岡田斗司夫「僕らの新しい道徳」/こういう時代だからこそ考えるべき道徳

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ああいじめ、原発、スクールカースト、日本が抱える大問題を解決するのは道徳だ!
ウェブマガジン「cakes」での人気連載がついに書籍化。
岡田斗司夫が小林よしのり、東浩紀、橘玲、古市憲寿、開沼博ら
7人の論客と徹底的に語り尽くす。

【目次】

まえがき―僕たちは大事なことを1つ見逃してきた

第1章 自我――なぜ今、道徳なのか
・道徳を学ぶ場がなくなった
・「いじめ」は最近の現象
・道徳のある人が「いい人」ではない
・僕たちの自我には不備がある

第2章 個人―現代の「ガンコオヤジ肯定論」
【高木新平×岡田斗司夫】
・知り合いにブログが炎上したらどうする?
・本宮ひろ志流の男気で理屈を粉砕する!
・なんで浮気しちゃいけないの?
・「いい浮気」なんて存在するのか?
・人間の生の感情に触れて初めて、道徳観は得られる
・戦争か奴隷か、どっちを選ぶ?
~など計9項目
★解説―「いい人」の道徳観を探る

第3章 合理性―道徳を「損得」でとらえてみる
【古市憲寿×岡田斗司夫】
・今の若者は不幸か?幸福か?
・わかりやすいボランティアをして、わかりやすく感謝されたい
・スクールカーストは「原罪」か
・スクールカーストをなくすことは簡単だ
・学校の存在意義ってなんだ?
・道徳と利益誘導、どっちがいい?
・道徳の教科書は、『週刊少年ジャンプ』でいい!
・損得で道徳を考える「倫理経済学」
~など計11項目
★解説―道徳を伝えるための『週刊少年ジャンプ』と「倫理経済学」

第4章 市民―“庶民”が “大衆”になり果てるとき
【小林よりのり×岡田斗司夫】
・権威の足腰が弱っている
・道徳と倫理の違い
・匿名だと道徳は形成されないのか?
・ネトウヨは共同体ではない
・AKB48内にいじめはない?
・美人がいない中国の工場
~など、計9項目
★解説―ネット共同体をめぐる世代論
★コラム―貧富の差と、道徳

第5章 共同体―不幸こそ分け合おう
【開沼 博×岡田斗司夫】
・フクシマは、世界史に残る事件だ
・反原発の都会と、原発を歓迎する地方
・原発の否定が道徳ではない
・原発を全国に造ろう
・再分配すべきは、「利益」ではなく、「リスク」
~など、計7項目
★解説―不利益の再分配

第6章 人間―社会で生きる“生物”としての人間論
【橘 玲×岡田斗司夫】
・億万長者になった人は、じゃんけんに勝ち続けただけ
・人間は因果関係でしか物事を理解できない
・簡単に首を切られていた古代の王様
・みなで虚構を信じるから社会が回る
・宝くじは愚か者に課せられた税金
・合理的思考を捨てないと投資で成功しない
・さまざまなプレイヤーが参加することで、多様なマーケットが生まれる
・インターネットが人間をイワシにする
~など、計16項目
★解説―人間の本質と、楽しく生きるコツ

第7章 政治―閉塞感を破る鍵は、「オタク」と「ヤンキー」
【與那覇潤×岡田斗司夫】
・3.11からの2年間で何が変わった
・トップの首さえ変えれば満足していた日本人
・日本国民=阪神ファン説! ?
・民主主義がうまくいくかどうかは国民性で決まる
・「0か100か」の純粋主義に陥りがちな日本人
・「政治分離」の本当の意味を理解しているか?
・二大政党制は日本人の国民性に会わない
~など、計13項目
★解説―健全な大人が興味を持つべきは政治ではない

第8章 活動―アートとデモは社会を変えるか
【東 浩紀×岡田斗司夫】
・「エヴァ」は庵野の命を吸い取る装置になりつつある
・SFというジャンルは死にかけている
・リアルとネットの新しい可能性
・「飲み会」はコミュニケーションコストを下げる
・これからは「私塾」の時代
・25年後の「フクシマ」 ~など、計9項目
★解説―福島第一原発観光地化計画は男らしくない!

第9章 夢―幸福のためには、嘘を信じなくてはならない
・7つの対談から見えてきた道徳の形
・自由民主主義はエンシュア・リキッド
・僕らには、信じられる嘘が必要だ
・道徳と倫理は矛盾する
・損得教の日本人を道徳的にする「倫理経済学」

p42~43
批判って一言で言っても、人やサービスに対するものから態度に対するものまで、または期待を込めたものだって、実にいろいろとありますからね。ただ、かまってほしいだけの人もいる。
「実際に会う」という身体的な感覚を取り入れることで、敵か味方みたいな二元論をほどくことができるかもしれない。今、大量な情報の渦の中で、ついつい神のような視点から物事を語り勝ちじゃないですか。いちいちかかわろうとすると身体がもたない。だから簡単に正論を言って片づけようとする。

自分を批判する人は敵とみなしがちですが、実は応援しているからこそ厳しいことを言っているのかもしれません。文字だけのネットの世界ではそういった微妙なニュアンスが伝わりにくく、誤解されてしまうことも多いのではないでしょうか。ネットでのコミュニケーションは気軽でいいですが、気軽さを乗り越えて実際に会ってみるとまた違った世界が見えるかもしれません。

p45
岡田 (略)俺とお前は違うんだ、というのは価値観の問題です。しかし、道徳の問題になるとそうは言えない。そんなことを許してはいけないと押し付けることができるのが道徳なんです。
高木 子どもがいる状況での浮気に関して言えば、それは道徳的にも「だめ」だと思うんですよ。親のどちらかが浮気して、その後の生活が崩れていった場合に、子どもはどうにもできないから。浮気というのは、子どもに対する一方的な暴力になってしまう可能性が大き過ぎるから「だめ」なんです。

例えば虫を殺すことが好きな人に関しては「そういう人もいる」で片づけてしまいますが、人を殺すような人に対しては「それはやっちゃいけない」と価値観の違いで片づけることはしません。道徳というのはそういうものだそうです。法律ともまた違います。案外簡単に考えがちな道徳ですが、実は奥が深いものだと思います。

p50
岡田 では、そろそろややこしい例にいきましょうか。なんで戦争はだめなんでしょう? 万引きはみんな「だめ」って言うじゃないですか。浮気が「だめ」っていうのもそこそこ社会の同意があると思うんです。でも、「戦争は?」って聞くと、結構意見が分かれるんです。
高木 (略)一般的には、人が死ぬのは悲しいから戦争はよくない、というのはある。でもそれも漠然としたイメージだし、国家や社会として見れば、戦争によって経済的発展が進んだ……とか数字を見せられると戦争が悪いものだとは一概に言えない気がする。

一般市民からすると戦争は絶対だめなものです。しかし政治として見るならばビッグビジネスで、大きなお金が動き、得をするところもあります。良いか悪いかで片づけることのできない問題だと思います。戦争は道徳的にどうなのかは悩ましいところです。

p55
岡田 わかりやすい道徳としてよく言われるのは、「自分が嫌なこと、人にやられて嫌なことをしない」というものですよね。でも、人によって、やられて嫌なことって曖昧じゃないですか。
嫌な関西人に、人をネタにして笑いをとって、相手が嫌がっていると、「お前も俺のことをネタにして笑いをとればいいねん」と反論するパターンの人がいます。自分はネタにされるのが嫌じゃないからって、人にもそれを押し付ける。

ネットのネタで「自分がされたら嬉しいことをしよう。女の子の裸を見せられうと嬉しいから裸を見せよう」というのがありました。やられて嫌なことはするなという教育を受けてきた人は多いと思いますが、道徳というものはこれで終わりではありません。道徳はもっと深いところまで考える必要があるテーマです。

p62
高木 (略)今、たいてい誰かのことを怒る理由は、「寝てるのにとなりの部屋がうるさい」だったりします。つまり、自分本位なんです。(略)都市というお互いの顔が見えない匿名の人間関係で生きているからこそ、仕方がないとも思うんですけど、こういう背景はインターネットでも同じですね。

怒る時は道徳に反していたからというケースは実は少なく、自分にとって不快だったからということが多いです。道徳に反していた人がいた場合、「関わらないようにしよう」で済ませてしまいがちで、関わってまでやめさせたい事柄は自分が被害を受けた迷惑行為です。

p81~p82
古市 逆に、なんで僕らは町にゴミを捨てないのかな。
岡田 僕のリアルな気持ちとしては、お天道様が見てるからだね。情けない自分になりたくないからという一線がある。ゴミは好きなだけ捨てて、拾う仕事を作ればいいという功利主義的な考え方をすると、その一線が壊れてしまう。

親や先生からゴミを捨ててはいけないと言われて育った人がほとんどだと思いますし、ゴミで汚された場所を見るとマナーが悪いと怒りがちです。しかし掃除する人が仕事にありつけるというケースもありますし、一概に悪いとは言えないのかもしれません。

p95
道徳というのは、人々の行動原理を記したものではなく物語です。ある時代の大多数が共感できる物語。だから、その時代に特有の道徳観を知りたかったら、『週刊少年ジャンプ』を読むのがいちばん手っ取り早い。
「みんなで助け合いましょう」と教えられたところで道徳は体得できないけれど、たとえば「ワンピース」でルフィが「おれは助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!!!」と宣言していたら、僕らの中に助け合いの気持ちが生まれるでしょう? キャラクターの演じる物語なしに道徳は成立しないんですね。

親や先生ではなく、漫画やゲーム、小説などの娯楽から道徳を学ぶというのは面白い観点です。海賊のルフィが道徳の先生となり得ます。親などがいなくても物語にさえ触れていれば子どもは道を間違えることはないのかもしれません。

p150(原発問題に関して)
「怖いのは嫌だ」「危ないから目の前からどけろ」と「押し付けるコミュニケーションをすることはあっても、「それは危ないね。別なところで受け入れる方法を考えようか」とか「こういう代替案があるけど合意できるだろうか」とう「押し付けを解除するコミュニケーション」をすることはない。これは震災前からのことです。
たとえば、放射性廃棄物についても、途上国に日本のための放射性廃棄物処理場を造ろうという話がありました。「これから途上国も原発を持つんだし、カネは払うから受け入れてよ」というのは、ずいぶん日本に都合のいい話ですよね。ところが、そういう問題については特に反対の声も上がらない。議論にすらならない。「自分が押し付けられるのは嫌だけど、誰かに押し付けるのは当然だ」という無意識がある。

自分に都合がよければ相手が損をしても構わないという無意識。言われなければ気が付きにくいでしょうがよくよく考えてみれば確かにそうです。自分がよければそれでいいと開き直るのも一つの手かもしれませんがそこまで居直ることのできる人はあまりいないように思います。

p165(成功は運だという話)
岡田 僕、「成功体験本」を出してしまう人の気持ち、わかるなあ。人間って、お金の話にかぎらず、自分の成功が運という不確かなものの上に成り立っているなどということを認める強さを持っていないんだよね。不安に耐えきれなくて理由を作ってしまう。

成功本を読んで実際に成功したというケースは聞いたことがありません。成功というと巨万の富を築いたことを指しがちですが、例えばバイトの面接に受かったとかも成功です。このケースで言うとたまたま応募した人が自分一人だけだったとか、希望のシフトがバイト先にとって都合のいいものだったとか、ただ単に運が良かっただけということは往々にしてあります。しかし自分の履歴書が良かったからとか面接テクニックのおかげとか考えてしまいがちです。

p178
岡田 (略)これまでは自分の周囲の中で目立つキャラであれば、どうにか生きていけた。でも、インターネットが広まったことで、比較の対象が数億人規模になったでしょう? そんな大人数で比べたら大半の人はつまらない人間になってしまう。だから、どうキャラ作りしていいかわからなくて、とにかく必死で自分を変え続ける。

ツイッターなどのSNSを見れば面白い人ばかり。芸能人などの目立つことのプロたちもいます。そういう人と比較されてしまうのはネットの良くない部分と言えるかもしれません。上を見ればキリがないので、自分は誰かと比べて劣っているという視点は持たない方が自分ののためなのかもしれません。

p283
今の世の中を見渡してみると、経済不況で仕事がなくなったり、男女とも未婚率が上がり続けたりと、あちこちで色んな変化がおきています。原発やエネルギーのように、どう考えていいのかわからない問題も増えてきました。
これまでの安定していた社会から、変動する社会へ。僕らはこの変化にうまく対応できていなくて、しんどくなっています。
どうしてしんどくなったのかを考えているうち、最近は見向きもされなくなっている道徳というツールが、意外に役立つのではないかと思いつきました。

お金を稼ごうにも稼げない、幸せになろうにもなれないのが今の世の中です。幸せになるのってこんなに難しいものだったっけと考えてしまいます。幸せどころか人並みにさえなれない人もたくさんいます。こうなると新しい価値観を見つけなければいけないのではないでしょうか。道徳だけですべてが解決するわけではありませんが、世の中の色んな問題に対して道徳をベースにして考えてみると新たな視点が見えてくるように感じられます。

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タイトルは「道徳」ですが、どちらかというと「社会」というおおざっぱなくくりで語った対談本です。岡田斗司夫さんの鋭い視点はそれだけでも面白いですが、知識人たちとの対談として仕上げることで味のある本になっています。ネットについての言及が多いのは世の中を表してからなのでしょうね。

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